カツミ

歴史

株式会社カツミ（KTM）は、1947年に港区白金で創業された鉄道模型メーカーです。設立当時は個人商店であり、ゴム動力で動く飛行機模型を扱っていました。

戦後すぐの創業であったため、鉄道模型は、進駐軍をはじめとした米国向けの輸出製品をまず手がけています。その堅牢性は米国市場でも好評で、外貨を獲得する重要な製品となりました。なお、港区に拠点をもっていた当時は「カツミ模型店」という名称でしたが、現在は、目黒区に拠点を移しています。

創業時は、Oゲージを主力製品としていましたが、1950年代の末ごろからHOゲージそして16番ゲージの生産・輸出も行うようになりました。特に16番ゲージにおいては、国内企業の中でもっとも多くの車両を製品化したメーカーとして知られています。JR発足以降のJR車両および私鉄車両のほぼすべてが、カツミによって16番ゲージとして製品化されていると聞くと、その豊富なラインナップが実感できるでしょう。

カツミは「模型らしい模型作り」をキーワードとして基本に忠実な模型作りをモットーとしています。

製品は金属製、主に真鍮（ブラス）をメインとして生産しており、精巧な形状を再現するプレス加工、塗装を手作業で行っています。真鍮製の鉄道模型は元々価格設定が高価ですが、カツミのようなハンドメイドの模型となると職人の減少や原材料費高騰により、昨今さらに価格が上がっている傾向にあります。

さらに一般的な製品以外に、京都鉄道博物館や東武博物館、九州鉄道博物館などに鉄道模型やジオラマを納品していることもあり、日本の鉄道模型のパイオニア的存在のひとつと評価されています。

特徴

カツミの特徴は、なんといってもプレス成型とロストワックス成型によって作られた真鍮製模型の重厚さでしょう。特に、ロウで原型を作ってから周りを石膏などで固め、加熱してロウを溶かしてからできたその空洞に金属を流し込んで成型するロストワックス成型は、複数の工程を必要とするものの精密な形状が作り出せる工法として知られており、カツミが高く評価される理由のひとつにもなっています。

その精巧さはジオラマ製作にも発揮されており、展示模型が全国各地の名だたる博物館に納められているのも納得です。

それを自らハンダで接着しつつ仕上げるという組み立てキットは、難易度の高いものですが、鉄道模型の「組み立て」を楽しむファンにとっては挑む意義のあるものといえます。

基本に忠実というモットーに違わぬ製品づくりは、作って楽しく、走らせて楽しいという鉄道模型ファン納得の逸品ばかり。カツミが現在主流として製作しているHOゲージは、作りがいもあり、走らせるにも、また展示模型のように飾って楽しむにも最適といえます。

とはいえ、玄人向けの製品ばかりではなく塗装済みの入門用のキットも製品化しています。入門用キットには真鍮製だけでなくプラスチック製品もあり、都内では、入門用キットを一から製作できる工作教室も定期的に開かれています。また、ハンダづけを学べるDVDなども発売しています。

鉄道模型は趣味の王様ともいわれ、模型を「作る楽しみ」だけでなく、鉄道を本物のように「走らせる楽しみ」、そしてジオラマにこだわって走る情景を再現する「飾る楽しみ」があるとされますが、カツミはまさに作ってよし、走らせてよい、飾ってよしのバランス感覚に優れた鉄道模型を生産するメーカーといえます。

ファンを惹きつける理由

カツミの鉄道模型を愛するファンは、カツミの鉄道模型の基本に忠実な点、そして作っても走らせても飾ってもよさを感じられる点に惹かれます。

カツミが、現在主流として製作しているのは80分の1のHOゲージです。レールをレイアウトしてもそこまでスペースを取らず、ミニチュアといっても見劣りしない存在感があるサイズといわれています。日本の住環境にマッチしたサイズの製品ラインナップを厚くしているところも、長くファンに愛される所以なのかもしれません。

また、HOゲージより大きく、カツミの造形美を感じられる45分の1サイズのOJゲージもファンにとって大きな魅力となっています。HOゲージの約2倍の大きさに相当するOJゲージは、迫力があって走らせた時のインパクトはかなりのもの。また、組み立て甲斐もあります。

カツミの組み立てキットは、ビギナー向けからエキスパート仕様まで、難易度別にさまざまな種類があるため、「次はあれを組み立ててみよう」、「いつか最高難度の組み立てキットに挑戦しよう」など目標を立てて趣味に取り組める点も魅力です。

初心者向けキットは塗装済みで、ニッパーとヤスリ、そしてピンセットがあれば比較的容易に組み立てることができますが、ハンダづけを必要とする真鍮製のキット、昔ながらのペーパー製キットなどは組み立て難易度がぐんとアップします。

カツミはジオラマにも定評があり、走行や展示を鉄道模型の楽しみとする人にとっても、非常に魅力的かつ満足できる車両設計となっています。

どの楽しみ方にも偏らない、こうしたバランス感覚がカツミの愛される理由なのかもしれませんね。

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