5インチゲージの基礎知識
「5インチゲージ」とは、線路の内側の幅127mm (5インチ)、縮尺1/6～1/12の大型鉄道模型です。屋外での乗車を前提としており、12人以上の人間を乗せて走ることができます。
なお、5インチゲージは主にヨーロッパで普及しており、アメリカやカナダのような北米では、5インチとは異なる、4と1/3インチのゲージが主流になっています。
車両の形態は、ライブスチームのほか、モーターやバッテリーを搭載した電動式があります。
主な国外メーカーとしては、英国のマキシトラック社(Maxitrak)、ライド・オン・レールウェイズ社(Ride on Railways)、コンパス・モデル・レールウェイズ社(Compass Model Railways)などがあります。
マキシトラック社は、ライブスチームと電動式の両方を取り扱っており、ライド・オン・レールウェイズ社とコンパス・モデル・レールウェイズ社は電動式のスペシャリストとして知られています。
国内メーカーとしては、モデルニクス(神奈川県)、せんろ商会(栃木県)、鉄太郎電鉄(静岡県)などが、オーダーメード品の受注販売や、車両製作キットの販売を取り扱っています。
5インチゲージの歴史
5インチゲージは、1899年にイギリスのモデル・エンジニアリング協会が公表した、鉄道模型5つの標準モデルのひとつとして紹介され、鉄道模型ファンの間で知られるようになりました。
初期のモデルでは、1920年代～60年代に活躍したイギリスの技術者、カーリー・ローレンス(Curly Lawrence)の設計が知られています。ローレンスは、「LBSC」のペンネームで、イギリスの鉄道雑誌「モデル・エンジニア・マガジン」に、模型蒸気機関車の記事を多数寄稿しました。小型のゲージから大型のゲージまで、ローレンスの設計は166両にもおよび、これらの多くは現在でも製造されています。
5インチゲージは、強い牽引力や扱いやすい重量などから、大型鉄道模型の中では海外で一番の人気を誇ります。
日本においては、各地の鉄道博物館や公園、遊園地、お祭りなどのイベントで見られるほか、愛好家が自宅の庭に設置したり、工業大学、高等専門校の学生が自作したりするケースがあります。
近年は、コンピュータを利用した設計や、3Dプリンタの登場などにより、車両設計や部品作成の時間が短縮されました。けれど、この半世紀の間、5インチゲージの製造と組み立ての方法は変わっていません。
この普遍さが、今なお、世界の愛好家を惹きつける理由の一つなのかもしれません。
5インチゲージの惹きつける魅力
鉄道好きなら誰もが、電車の先頭車両に一目散に向かい、運転士さんが運転する姿をじっと見ていた事があるのではないでしょうか?
5インチゲージの醍醐味は、自分の電車を運転して走行する、爽快感を味わえることです。
5インチゲージの車両は、小型ながらパワフル。ミニ鉄道と聞くと、小さいお子さん向けのように思えますが、老若男女問わず乗って楽しむことができます。
スピードは時速5-12Kmと、自転車に乗って走るくらい。風を切り、線路のジョイント音を聞きながら走行していると、まるで少年の心に戻ったかのような気持ちになります。
5インチゲージの愛好家の多くは、模型を自作しています。自作の模型は、やはり愛着が湧きますし、製作の中であれこれと試行錯誤する過程そのものが楽しいそうです。
一から図面を引き、車両の工作から線路のレイアウト、走行に至るまでは、数年の歳月を要します。それでも、時間をかけてコツコツ製作をつづけ、完成したときの達成感は、はかり知れないでしょう。
なお、5インチゲージは、国内の施設などでも乗車することができます。
代表的なものでは、埼玉県大宮市の「鉄道博物館」にある、E5系新幹線をモチーフにした「ミニはやぶさ号」、群馬県の「碓氷峠鉄道文化村」を走行する「ミニSL」、関西で最大級の手作り5インチゲージに乗れる、奈良県「まほろば鉄道」などがあります。
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