河合商会 | 鉄道本舗の石川です！

歴史

河合商会は、1972年創業、1973年設立の模型メーカーです。

東京都足立区に本社を置いていた株式会社で、もっとも活発だった2003年8月期には9億円もの売上を記録していました。

2011年にリーマンショックや東日本大震災の影響を受けて売上が低迷、翌年の2012年に事業停止、自己破産申請を出すに至りました。負債総額は1億円を超えていたといわれています。

河合商会は卸売業を担い、プラスチック模型製造・販売を行ってきました。従業員数は10人とコンパクトな企業でありながら、最盛期は香港からダイキャスト製モデルを輸入、中国などには自社製品の輸出を行うなど、アジア展開もしていた歴史があります。

香港から輸入していたダイキャスト製品は、鉄道模型ではなくバイクがメインで、トレーラーやトラック、ミニカー、ヘリコプターなどを取り扱いしていました。また、中国や韓国のメーカー製品も一時期取り扱いがありました。

2012年に廃業後は、ポポンデッタが鉄道模型分野の製品を引き継ぎ、「貨車シリーズ」を「ポポ貨車」として販売。また、イベント会場での河合商会在庫品セールなどもサポートしました。

ポポンデッタは、税理士である太田和伸氏が1999年にオープンさせた鉄道模型店で、当初は通販のみを行なっていましたが、フランチャイズの実店舗経営や買取店、鉄道模型コンセプトカフェなどを精力的に行なっているお店です。

また、河合商会の代名詞的商品である「風物詩シリーズ」、「箱庭シリーズ」などのプラモデル製品は、2004年設立の鉄道模型、プラスチック製品の製造・販売を手がける企業マイクロエースが引き取っています。

特徴

河合商会の鉄道模型は、Nゲージです。ディーゼル機関車、ホッパー車、除雪車や石油タンク車、冷蔵車、冷凍貨車といった多彩なラインナップが特徴で、特に貨車は種類が多いのが特徴です。

トミーナインスケール（現在のトミー／TOMIX）が手がけていた香港製貨車を、再生産していたこともあります。

その技術の高さから、OEM製造代行（他社ブランドの製品製造を請け負うこと）も担っていたことがあります。

そして河合商会の最大の人気シリーズといえば、「風物詩シリーズ」でしょう。風物詩シリーズとは、塗装済みのジオラマ製品で、鉄道模型とジオラマを始めたばかりの初心者にも扱いやすいアイテムです。また、紙粘土やニスを用いてカスタマイズできるので、自分好みに作り込んでいくこともできます。

風物詩シリーズには、すし屋やそばや、船宿、水車小屋といった懐かしの建物がラインナップとして揃っていて日本の原風景に鉄道模型を走らせたい人にぴったりです。

なお、河合商会は植物の種を使って自然のジオラマを育てることもできる「箱庭シリーズ」もリリースしていました。Nゲージと同じ縮尺で作られているため、鉄道模型を走行させても違和感がありません。これらは雪や花畑、山肌などを再現できるカラーパウダーを組み合わせて用いることで、四季を再現することも可能です。

鉄道模型、風物詩シリーズ、箱庭シリーズなど河合商会の製品に共通している特徴は、オリジナリティの高さ、そして高品質なクオリティを安価で提供していることです。最盛期の河合商会は中国にも工場を置いて、クオリティを保ちつつ低価格な製品づくりを実現していました。

ファンを惹きつける理由

河合商会の魅力は、郷愁を誘う情景モデルパーツの豊富さにあります。

鉄道模型自体はNゲージで、安価な製品を扱うメーカーのひとつですが、懐かしい日本の風景をジオラマ化した「風物詩シリーズ」、本物の種から風景を育てられる「箱庭シリーズ」など、模型のレイアウトに最適なジオラマ製品が数多くリリースされていました。

特に貨車の品揃えが豊富であり、日本の貨車列車再現を趣味とする模型ファンにとってなくてはならない存在でした。事実、河合商会が事業継続困難として自己破産を申請した際、いきなり購入できなくなったことに驚いた愛好家も少なくなかったようです。

また、オリジナル製品製作を請け負っていた時期もあり、その技術の高さは折り紙つきです。

樹木や植毛マット、カラーパウダーといったジオラマ製作素材も豊富に取り揃えられ、日本の風景レイアウトにこだわる模型ファンでも納得のレイアウトを製作することができました。パウダーによって、ジオラマにリアリティをもたせたり独自性を追求したりといったことが可能になります。

こうした実績から、河合商会の製品は、鉄道模型をポポンデッタ、マイクロエースがプラモデルや「風物詩シリーズ」、「箱庭シリーズ」などのジオラマ製品を引き取り、販売を継続させているのでしょう。時代の流れで完全撤退を余儀なくされる模型メーカーや模型店が少なくない中で、河合商会は鉄道模型ファンに愛され、縁によってつながって現代に受け継がれるメーカーといえます。組み立てる、鑑賞する、走らせるを楽しめる鉄道模型。その走らせる楽しみをジオラマやレイアウトに見出す人のための、模型メーカーです。