皆さんが普段利用する電車。行先が分からない時に、電車に付いている方向幕を見て確認する人も多いでしょう。この方向幕、実はデザインや配置が路線によって違うのをご存知ですか?
この記事では、山手線や名鉄など4つの路線を例に、個性豊かな方向幕の特徴と歴史を紹介します。
山手線
最初に紹介するのは、山手線の方向幕です。
東京の大動脈である山手線では、つい最近まで単色LEDの方向幕を搭載した車両が走っていました。
その後、2016年からフルカラーLEDの方向幕を搭載したE235系が走っています。E235系の方向幕は、他の路線の車両が搭載しているフルカラーLED方向幕よりも表示がさらに繊細で、文字の読みやすさが特徴です。
しかもE235系の方向幕は、ただ行先を表示するだけの仕様ではありません。前面の方向幕には様々なイラストを表示する機能があり、月によって表示するイラストも違います。デザイナーの遊び心でしょうか。
これからも山手線は、ホームで電車を待つ利用客の人たちを少し楽しませてくれる路線となり、ビジネス及び観光の象徴路線として知名度を上げていくでしょう。
JR西日本(京阪神エリア)
続いて紹介するのは、京阪神エリアで活躍するJR西日本の車両です。京都、大阪、神戸と関西を代表する都市を結ぶJR京阪神エリアでは、主に3ドアのクロスシートの車両が走っています。
この車両の方向幕は、列車の種別(普通、快速、新快速など)と行先が独立しているのが大きな特徴です(一部車両は一体化)。
多くの鉄道会社では種別と行先が一体化された方向幕を採用しているので、2つが一体化した方向幕はそれだけで個性的ですよね。
さらに面白いことに、種別が幕式で、行先がLED表示器になっています。これはLEDを行先表示機に採用して間もない頃、単色しかなく色で区別していた種別には不向きだったことから、種別には幕式を採用したのです。
このスタイルのおかげでJR西日本の車両のオリジナル性が生まれました。
近年フルカラーLEDが主流となってからは、大阪環状線に種別と行先を一体化した方向幕を搭載した車両が登場しました。
これは時代の流れでしょう。ちなみにこの車両の方向幕は、クリスマスの時にクリスマスツリーのイラストを表示する機能が付いています。年に1度の楽しみになりますね。
JR山陽本線(広島地区)
続いて紹介するのは、広島地区を走るJR山陽本線です。それまでこの路線の車両は、大半が国鉄型の車両で占められていました。しかし、車両の老朽化が進んでいたことから2015年に新型車両227系(愛称・レッドウィング)を導入します。この車両の導入により、山陽本線は一気に近代化を果たしました。
広島地区を走る227系の方向幕には、実は地元の広島ならではの機能が付いています。
広島東洋カープのマスコットキャラクター、カープ坊やのイラストが表示されるのです。
言うまでもなく広島は、広島東洋カープの本拠地です。2016年に広島東洋カープは、25年ぶりとなるリーグ優勝を果たしました。それを記念して、227系の方向幕にだけカープ坊やのイラストが表示されるようになったのです。
これには、地元の広島の方々や鉄道ファンも歓喜に沸きました。
また2018年の西日本豪雨の際は、“がんばろう!広島”と広島の方々を元気づけるメッセージを表示し、「山陽本線は地域に寄り添う路線」を印象付けてくれました。
名古屋鉄道
最後に、名鉄こと名古屋鉄道の方向幕を紹介します。名鉄といえば、愛知県と岐阜県に跨る東海地方唯一の大手私鉄です。
名鉄の車両には、全国で唯一の方向幕が存在するのをご存知ですか?オーロラビジョンという液晶式の方向幕を一部の車両に搭載しています。
この方向幕はその名の通り、液晶ビジョンで種別、行先を切り替えるという全国の鉄道会社でも珍しい方式です。
液晶式方向幕が導入されたのは2004年です。、2007年頃まで採用されていましたが、それ以降は採用されなくなっています。採用されなくなった大きな理由は視認性の悪さです。反射式の液晶ビジョンには、太陽や照明などの光に当たると見えにくくなってしまうという欠点がありました。そのため、利用客からも「方向幕が見えにくくて不便だ」と不評だったのです。2008年から製造された車両からは、液晶ではなくLED方式の方向幕を採用しています。
名鉄としては失敗作に終わってしまったものの、歴史に残る貴重な方向幕として、これからも鉄道ファンの記憶に残り続けることでしょう。
まとめ
全国的に見て、遊び心を設けた方向幕や地域性を反映した方向幕などが存在しているのが分かります。
幕式が主流だった昔と比べて、LEDが主流になってきているのは時代の流れでしょう。
今回紹介したように、各社が知恵をしぼり、利用客を楽しませる様々な工夫が伺えます。今後どのような個性的な方向幕が生まれるのか楽しみですね。
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