ムサシノモデル

歴史

ムサシノモデルは、日本型の鉄道模型（16番ゲージ/OJゲージ）を製造したり、アメリカ型鉄道模型の輸入を行ったりしているメーカーです。鉄道模型の製造は韓国の工場で行なっています。日本型の車両は、国鉄の旧型車両、新型電気機関車、蒸気機関車、私鉄の車両などが主なラインナップです。

ムサシノモデルが設立されたのは1996年、有限会社ムサシノモデルとしての本拠地は東京都板橋区清水町です。

米国の真鍮製模型（ブラスモデル）の取り扱いも古く、米国製鉄道模型の全盛期とされる1960〜1980年代のユナイテッド、ゴーモデル、フジヤマなどの名作モデルを数多く輸入、レストアしてきた歴史があります。

ムサシノモデルの自社模型としては、真鍮とプラスチックを巧みに組み合わせて価格を抑えた模型を得意としています。安い価格でありながらも、クオリティは高く、特にディテールにこだわった造形で知られています。

ムサシノモデルの公式ホームページに掲載されているキャッチフレーズは、「それはあなたの心の停車場を全体明るくし、心象スケッチの”ハンラン”を呼び起こすジェネレーター」です。心にときめきと喜びをもたらす鉄道模型ということでしょうか。会社の鉄道模型に対する愛が伝わってくるフレーズです。

サイトでは営業時間のほか、商品のリリース情報、外国製製品情報、制作裏話までが更新されています。

ホームページがいつの間にかクローズされてしまう鉄道模型メーカーも少なくない中、遠方からもメーカーの最新情報がチェックできるのは嬉しいですね。サイトは、車両の扉を模したエンターボタンや、「注文の多い料理店」をもじったテキストなど、小さな遊び心が隠されています。

特徴

ムサシノモデルの特徴は、低価格帯商品でありながらも精緻に作り込まれている造形です。

ケースに入れて飾っても、手のひらに乗せてあらゆる角度から眺めても、ゆっくりと走行させても楽しめるという謳い文句の通り、リアルな造形を実現しています。特に、走行時は近景でも遠景でも眺めて美しい走行姿を保つということを念頭に設計されています。

また、車両にコアレス・モーターを採用していることも大きな特徴です。コアレス・モーターとは、名称のようにコアのないモーターのことで、高効率を達成できることが魅力。ラジコンや高級鉄道模型のほかに携帯電話の振動モーターとして用いられることもあります。

ムサシノモデルは、鉄道模型にコアレス・モーターを採用した先駆的存在と自負しており、このモーターを搭載することでリアルな走行を可能にしています。

ムサシノモデルは16番ゲージ、HOn3 1/2、13mmゲージ、OJゲージをリリースしていますが、「旧型国電構造図集」、「群馬の鉄道」といった書籍出版を手がけているのも特筆に値します。どちらも出版はあかぎ出版ですが、「旧型国電構造集」は図面の構成などを監修していて、限定700分の希少本となっています。「群馬の鉄道」は、私鉄やすでに廃線となった鉄道を含む群馬の全鉄道を網羅した研究書としても価値のある一冊です。

車両造形、米国製ブラスモデルの輸入のみにとどまらず、書籍の監修・サポートを行っているのも長年鉄道模型を愛する姿勢を貫き続けているムサシノモデルの特徴といえるでしょう。

ファンを惹きつける理由

ムサシノモデルが鉄道模型を惹きつけるポイントは、鉄道模型を鑑賞する楽しみ、走らせる楽しみを満たすディテールにあるでしょう。また、ムサシノモデルの製品は比較的低価格なため、初めて鉄道模型に親しむ人や、趣味を久しぶりに再開したい人にとっても手を出しやすい模型といえます。

高い技術をもちながらも高級路線に向かわないところが、ムサシノモデルの気概といえるのかもしれません。

一方で、米国のブラスモデルについては名作と名高いモデルを多く取り扱い、レストアを手がけてきました。決してビギナー向けだけに限定することなく、鉄道模型を愛する人すべてを満たす製品リリースを目指す姿勢が、そこにはあります。

ホームページもかなり頻繁に更新されているので、東京近郊に住んでいなくても常に新製品のチェックができるのも大きな魅力です。鉄道模型は歴史のあるホビーですが、現代ではネット通販やSNSでの発信も求められているため、ムサシノモデルのようにオンラインに対して積極的なメーカーは、ファンにとって嬉しい存在です。模型を作る際の裏話やぼやきなどが読み応えのあるコラムとしてアップされているのも、愛好家にとっては希少な資料といえるでしょう。塗装する上での色の調合の難しさ、OJ製品の開発における難所、価格設定の背景までが明かされています。ホームページでは、YouTube（サイト上では「ユーチュウブ」）での公式動画も紹介されていて走行した際のリアリティを確認することもできます。中堅のメーカーでありながら、意欲的にネットでの発信を行なっているムサシノモデルは、若い鉄道模型ファンが出会いやすいメーカーともいえるかもしれませんね。