リリプット

歴史

リリプット（Liliput）は、オーストリアにあった鉄道模型メーカーです。

HOゲージの専門メーカーで、旧型軍用車両など他社の手がけないマイナー車両を多く製品化することで知られていました。

精密なモデルでありながら比較的安価であり、品質が良くてにいれやすい模型を数多くリリースしていました。

リリプットは一度ミニカーを扱うドイツのヘルパ社（Herpa）に買収されましたが、それは長く続かず、バックマン（Bachmann Industries）に転売され、傘下となっています。

ヘルパ社は、自動車模型と飛行機模型を販売するメーカーで、1949年に設立され、1992年に現在のヘルパという名称になりました。本社はドイツのバイエルン州に置いています。

その後、転売されたバックマンは、イギリスの海外領土であるバルミューダに籍を置く香港資本の世界的な鉄道模型メーカーで、リリプットのほか、イギリスのグラハム・ファリッシュなどを傘下として大きく事業を展開させています。

鉄道模型メーカーの歴史の中には、買収した企業が倒産や廃業を余儀なくされ、元会社ごと消滅してしまうケースもありますが、リリプットはバックマンに買収されたことで、現在もその名と技術が残る幸運な例といえます。バックマンの取り扱い製品は、米国のNゲージ、HOゲージを筆頭に、Gゲージ、ヨーロッパ型Nゲージ、HOゲージ、中国型Nゲージ、イギリス形Nゲージ、OOゲージ、Oゲージ、Gゲージ、またそれらの線路や装置、アクセサリー、ストラクチャーなど多岐にわたりますが、このいくつかにはリリプットの技術やノウハウが役立っていることでしょう。

特徴

リリプットの特徴は、ヨーロッパの他社メーカーが製品化しないようなマイナーな車両をモデル化、製品化している点です。

リリプットは精密な構造を得意としていて、Uボート積載車、鷲の紋章つきの将官用サロン車や特等客車とダイニングカーといったマニアックな車両の製品化を行なっていました。

バックマンに買収されて以降も、金型はリリプットのものを流用して製品製造が行われているため、今でも質の良い珍しい車両を購入できるのも特徴です。企業が倒産したり廃業したりすると、金型や設計図も消失してしまい、同じ製品の再現が難しくなってしまうのが通常ですが、リリプットの場合は、ヘルパ社からバックマンという二度の売却を経てもなお金型が保存されていたため、リリプット自体が傘下企業となっても製品や製造技術が守られることとなりました。

人知れず廃業したり、後継者不在で金型や設計図の保存に頭を悩ませるメーカーも少なくない中で、稀有な例といえるでしょう。

なお、精密模型を販売していながらも、比較的買い求めやすい価格に安定しているのも大きな特徴といえます。

鉄道模型は、鑑賞したり走行させたりするのに広いスペースを必要とすること、また玩具というには高価な商品が多いことから、富裕層向けの趣味と思われることがあります。リリプットはこうした中でも価格を抑え、手に入れたい人が購入しやすい価格設定を守ってクオリティの高いモデル作りをしました。

現在も世界的な鉄道模型メーカーであるバックマンの下、中国で生産をしているので、比較的価格は高騰せずに抑えられている傾向にあります。

ファンを惹きつける理由

リリプットがファンから愛されているのは、鉄道ファンとミリタリーファンの両方を満たす通な製品群によるものでしょう。

鉄道模型愛好家の中でも、歴史好き、ミリタリー好きに好まれるメーカーです。

Uボート運搬用車両や将官専用のサロン車両など、ミリタリーファンでなければ知らないようなマニアックな車両のモデル化は精密模型を得意とするリリプットだからこそ製品化できたといっても過言ではないでしょう。リリプットがバックマンに買収される際も、金型を引き継いでいるために継続的にモデルを販売できているのも、ファンにとっては嬉しい限りのはずです。

また、精密な模型製造を得意とするリリプットが模型化することで、歴史や軍用車両に詳しい愛好家も納得できるような精緻な作りになっていることも特筆に値します。

さらに、そうした希少価値の高いモデルが一部の好事家に向けたプレミア価格ではなく、一般的に購入できる価格帯で販売されていることも、ファンには嬉しいことです。

鉄道趣味は、お金のかかる高級な趣味といわれることもありますが、リリプットは高い技術の結晶である模型を、手の届く値段で購入できるところが魅力になっています。

バックマンに買収されて以降は、旧製品のリリースだけでなく少しずつ新製品の開発、製造、販売がなされています。これも、リリプットのスピリットを愛するファンにとっては嬉しいニュースですね。低価格帯模型は、中国生産の競争激化で、旧リリプットより若干クオリティが劣るという声も聞かれますが、随時改良が加えられていると擁護する声もあり、愛好家にとっては見守る楽しみもあるのではないでしょうか。