珊瑚模型 | 鉄道本舗の石川です！

歴史

珊瑚模型店は、2018年に閉店するまで営業を続けていた鉄道模型店です。店舗は、東京都杉並区方南に位置し、オレンジの鮮やかな看板が目印とされていました。

翌年の2019年当時は、パーツ及び在庫品の販売が継続されており、日曜日のみ不定期で営業されていたともいわれています。閉店の理由は、店主の体調不良ともされており、2019年以降の販売は親族が担っていたというファンの説もあります。

往時の珊瑚模型店の取り扱いは真鍮製の模型で、16番ゲージ、1/87スケール12mmゲージを主に製造・販売していました。

また、あずさ模型などのメーカー発売元としても仕事をしていたため、ナローゲージやNゲージ製品を手がけていたこともあります。

店主はプレス工場に勤務していた経験があり、元々は鉄道模型の製造会社から下請けをしていました。1964年に同じく下請けをしていた仲間と珊瑚模型店の前身となる店舗をオープンさせ、2年後の1966年から本格的に珊瑚模型店としての営業をスタートさせました。

なお、珊瑚模型店は、毎号のパーツを買い集めて製作するデアゴスティーニ・ジャパンから刊行された「蒸気機関車C62を作る」のディテールアップパーツの販売も手がけていました。

デアゴスティーニの週刊「蒸気機関車C62を作る」は、2007年8月に創刊された全100号のクラフトマガジンシリーズ雑誌で、すべての号を購入することで、デアゴスティーニ限定の1/24スケール真鍮製モデルが完成するというシリーズでした。

このC62にリアリティをプラスできるディテールアップパーツも、珊瑚模型は製造・販売していたのです。

珊瑚模型店の特徴は、昭和の牽引機、明治時代の古典機と呼ばれる車両など、さまざまな車両を製品化していることです。

珊瑚模型店の主な取り扱い製品は16番ゲージで、何かとスペースが限られる日本住宅でも遊びやすいスケールの製品をリリースしていた模型店といえるでしょう。

プレス工場での勤務経験があり、他社の鉄道模型の下請けを行うほど技術をもった店主によって製品化された模型キットは、唯一無二の魅力があります。

特に、珊瑚模型店のオーナーは鉄道ファンから信頼が厚く、カリスマ的な人気を誇っていました。珊瑚模型店が製造・販売していた蒸気機関車のキットは、技術的に作るのが難しいとされていますが、その分完成した時の喜びも大きいものです。

そういった意味で、珊瑚模型店は飾る、走らせるよりも「作る喜び」に特化した鉄道模型のお店といえるかもしれません。

往時の店内にはショーケースがあり、見本品のほかに顧客の作った蒸気機関車などの作品も展示されていました。

珊瑚模型店の閉店が知らされた時、蒸気機関車工作ファンの衝撃は大きかったといわれています。

二玄社からは、「写真と図面で楽しむ鉄道模型ー珊瑚模型店45年の仕事」、「写真と図面で楽しむ鉄道模型<2>珊瑚模型店の小宇宙」という冊子が2009年、2012年にそれぞれ刊行されていて、珊瑚模型店の精緻な仕事を堪能することができます。

なお、珊瑚模型店の手がけるパーツは「サンゴパーツ」という名称で呼ばれ、こちらも厚い支持を受けているアイテムです。サンゴパーツは、珊瑚模型店の店主が亡くなった後も、親族の方により日曜日のみ営業の店舗で販売が続けられていました。

また、FAXによる注文受付にも対応していたようです。

珊瑚模型店は、普及品価格でもクオリティの高い模型やパーツ（サンゴパーツ）を手がけていた模型店で、ファンも筋金入りの鉄道模型ファンばかりです。

珊瑚模型店に通っていた愛好家の中には、趣味が高じてプロモデラーとして活躍している人もいるとか。

また、珊瑚模型店の仕事をまとめた冊子「写真と図面で楽しむ鉄道模型ー珊瑚模型店45年の仕事」、「写真と図面で楽しむ鉄道模型珊瑚模型店の小宇宙」だけでなく、ファンサイトも存在していました。

閉店と同時にファンサイトもクローズしたようですが、珊瑚模型店の店主はカリスマ的な人気を誇っていたため、お店にとって効果的な情報発信をしようというファンの方がいらっしゃったと思うと感慨深いですね。

珊瑚模型店は公式ウェブサイトを開設していなかったため、鉄道模型ファンにとっては、このファンサイトが情報を得る有効な手段となっていたようです。

また、閉店直後は、ファンサイトの後継的なホームページとされる「珊瑚の観察日記」というページも作られていました（現在は休止中）。

ほかにも、閉店時にはクローズを惜しむブログが数多くアップされていて、いまなお「何らかの形で復活してほしい」と望むコメントも寄せられています。どれだけお店が愛されていたかが伝わってきます。

なお、オーナーが亡くなった後、珊瑚模型店のショーケースには工具やプレスの金型、モーツァルトのCDなどが置かれていて、店主を偲ぶことができたそうです。閉店後の日曜日に訪れたファンは、そこでオーナーを偲んでいたのかもしれませんね。

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