阿佐海岸鉄道は、徳島県海陽町と高知県東洋町を結ぶローカル線で、徳島県や高知県などの地方自治体の出資によって設立されました。
鉄道車両として改造されたバス車両のDMV(デュアル・モード・ビークル)が導入されていて、全長8.5kmの阿佐東線(阿波海南駅-甲浦駅)では鉄道として、それ以外の区間ではバスとして直通運転を行っています。
阿佐海岸鉄道の歴史
阿佐海岸鉄道は1988年に設立されました。設立から4年後の1992年には、阿佐東線(海部駅-甲浦駅)が開業。阿波海南駅-海部駅がJR四国から編入されて、現在の阿佐東線となったのは、2020年11月のことです。
もともとは土佐くろしお鉄道の阿佐線として、JR四国の牟岐駅-後免駅を結ぶ計画があった路線ですが、牟岐駅-海部駅が開業した後に、赤字が見込まれるとして、国鉄再建法により建設中止となりました。
その後、牟岐駅-後免駅の高知県側を土佐くろしお鉄道が、徳島県側を阿佐海岸鉄道が建設を続け、開業に至ります。
2021年の1月からはDMVの走行試験を開始し、同年12月25日から本格的にDMVの営業運転が始まりました。線路から離れた道の駅などへも、道路を走ることで直通が可能になり、利便性向上や利用者増加に繋がっています。
世界初のDMV(デュアル・モード・ビークル)
DMVは日本で開発されたものですが、海外では古くから道路と鉄道線路の両用バスが研究されていました。試験走行だけで終わってしまったものや現在開発中のもの、実際に営業運転されたものなどいくつかあります。
日本では、JR北海道が2004年にDMVの試作車を完成させましたが、10年後には開発を断念。DMVに関心を寄せた徳島県が阿佐海岸鉄道に導入し、阿佐東線で世界初のDMVの定期営業運転を開始しました。
鉄道モードとバスモードの切り替え駅である、阿波海南駅と甲浦駅のMIC(モードインターチェンジ)では、DMVのモードチェンジの瞬間が間近で見られます。
車体を浮かせ、鉄道用の車輪を下ろし、約15秒でモードチェンジが完了。ついさっきまで道路を走っていた車両が、ガタンゴトンと音を立てて走る姿に驚くでしょう。
阿佐海岸鉄道はDMVを3両導入していて、それぞれに違った愛称やメッセージが込められています。
青色の1号車「未来への波乗り」は、太平洋の波と、沿線の東洋町で有名なサーフィン、宍喰駅の伊勢えび駅長がデザインされていて、「未来に向かってチャレンジする」意味です。
緑色の2号車「すだちの風」は、徳島県の特産品のすだちと、しらさぎが「空高く舞い上がる」意味、赤色の3号車「阿佐海岸維新」は、高知県出身の坂本龍馬と、南国土佐に浮かぶ太陽がデザインされていて、「地域活性化の維新を起こす」ことをイメージしています。
伊勢えび駅長
宍喰駅は、阿佐東線唯一の有人駅であり、徳島県最南端の駅です。グラデーションの彩色で、アーチ型が特徴的な駅舎となっています。
駅のプラットホームからは宍喰の街や太平洋を望めて、反対側には山々に囲まれた田園風景が広がっています。
駅長室(水槽)には、地元海陽町名物の伊勢えび駅長として勤務。実は開業以来1度も黒字になったことがない阿佐海岸鉄道。伊勢えび駅長の起用には「赤字からの脱皮」という願いも込められています。
チャレンジを続ける阿佐海岸鉄道
阿佐海岸鉄道は新しい波に乗るため、DMVや伊勢えび駅長など、斬新なものにチャレンジしています。DMVに乗って四国の自然を堪能しつつ、阿佐海岸鉄道のチャレンジ精神にも注目してみてくださいね。
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