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由利高原鉄道

1985年、当時の国鉄矢島線を引き継ぎ羽後本庄~矢島間を結ぶ全長23kmを第三セクターとして開業し、「ゆりてつ」の愛称でも親しまれている由利高原鉄道。

過疎化や少子化といった課題と向き合いつつ、名山、鳥海山をはじめ、米どころならではの美田や清流の風景といった秋田の魅力を発信する鉄道です。

歴史

 由利高原鉄道の前身は横荘鉄道という、羽後本庄~前郷間を結ぶもので、開通したのが1922年(大正11年)のことでした。これが1937年9月、鉄道国有法によって国鉄矢島線となります。

そして同年12月に前郷~西滝沢間が開業、翌年10月には西滝沢~矢島間が運転を開始し、現在の羽後本荘~矢島間全線が開通しました。その後地元の足として重要な役割を果たしつつも経営面では苦戦していた結果、1981年に矢島線は国鉄の整理対象となります。

そこで秋田県や由利本荘市を中心として14団体が立ち上がり、沿線住民の大切な生活の足であるこの鉄道の存続を決めました。こうして由利高原鉄道は1984年に設立、翌年の10月に開業したのです。

社章は由利の「ユ」を鳥海山のシルエットに組み込んだデザインに決まりました。また事前の一般公募により列車の愛称を「おばこ」としました。17歳から20歳くらいの秋田美人を指す「おばこ」が由来です。

 その後も平坦な道ではないものの、様々な鉄道の活性化の策が打ち出されていきました。

個性あるイベント列車の開催、メディアへの働きかけ、SNS の活用等の他、2013年には矢島駅開業75周年を記念して鉄道模型としては世界初となるフェノール樹脂材を精密に加工した「YR-3000形HO鉄道模型」の受注製造を実現しました。

 こうして2015年、由利高原鉄道は30周年を迎え、地元関係者や全国の鉄道ファンからのサポートが続く中、2019年、公募により仙台市役所での勤務から仙台交通社長も務めた萱場氏が新社長に就任就任しました。

氏は定期旅客の利便性を高めると同時に鳥海山での体験型観光等、沿線の観光資源を生かし地域外からの訪問数増加を図っています。

路線

 由利高原鉄道は羽後本荘駅~矢島駅間の23km、11駅を約40分かけて運行しており、

路線は子吉川により沿う形で走っています。通学の足として利用増を図る為に定期代金の割引を実施したり、矢島駅でテーブルや空調の設備を整備するといった利便性の向上を目指す試みも実行しました。

またゴールデンウィーク等観光やイベントシーズンには臨時列車の案内をし、第三セクターに生まれ変わった「鳥海山ろく線」としてフレキシブルな対応にも努力を続けています。

沿線

 羽後本荘駅、薬師堂駅、そして矢島駅には新車両の3色である緑、赤、青をモチーフにしたオリジナルの飲料自動販売機が設置されており、硬貨を入れると列車アナウンスが流れるというユニークな仕掛けがあります。

 西滝沢駅には江戸時代から明治時代への移行期にあたる1868年に久保田藩・津軽藩と庄内藩の間で起きた山田合戦の跡があり、明治維新の歴史の一幕を感じることができます。

 有人駅である前郷駅は単線区間になっている為、タブレット交換の作業が見られるスポットです。また安産の神がいる三光神社や神楽殿が市指定有形文化財となっている前郷日枝神社、入浴施設のある交流センターゆりえもんがあるのもこの駅です。

 大型バスの停車スペースがある子吉駅の周辺の田んぼには、雪の季節の前後に複数の白鳥が現れます。また割山峠では野生のカモシカが見られることも。

車両

 2012年に登場した新型車両がYR-3000形です。車両毎に基調となる色が赤、緑、青と異なるという特徴がありデザイン性が楽しめる外観となっています。

車体長が18m、車体幅2.8m、定員は114名というサイズです。初めの車両は日本車両の豊川製作所で造られました。内部は座席、テーブル共にゆとりのあるサイズを取っており、乗客から好評も得ています。

車両は観光列車としても利用できるよう、イベントテーブルが設置可能で電源を多くしています。また寒さや雪対策を充実させるといった工夫がされています。

 由利高原鉄道の列車には大きな特徴があります。それはタブレット閉塞機を搭載しているという点です。

昔はよく見られた風景ですが、近年国内では由利高原鉄道を含めてわずか3線のみが採用している列車衝突を防ぐ為の仕組みで、この機材は乗客もガラス越しに見ることができます。

 ところで由利高原鉄道を一躍有名にしたのはラッピング列車です。中でも2011年から2014年にかけて実施された宇宙戦艦ヤマトのラッピングは大きな話題を呼びました。

アニメ、主題歌の大ヒット、映画化と熱心なファンが多いこのアニメのラッピングが実現したのは、版権を持つ東北新社の植村最高顧問が沿線出身という縁で無料で使用を許諾したというエピソードがあります。

この他にもロケ地として採用された縁で釣りキチ三平PRラッピングや漫画「ゆりてつ 私立百合ヶ咲女子高鉄道部」とのコラボラッピングも話題を呼びました。

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