関東平野の北の端、赤城山の麓をほぼ東西に走る鉄道線。「じょうでん」の愛称で親しまれていますが、沿線の高校の合併や閉校など、少子高齢化や人口の減少により利用者が低迷しています。
近年、補助金を利用して体質改善に着手、各駅の改修改築などに取り組んでいます。
路線概要
上毛電気鉄道の唯一の路線、上毛線は、群馬県の県庁所在地の「中央前橋」から赤城山の麓を通り桐生市の「西桐生」を結ぶ25.4キロ、全23駅の路線になります。
所要時間は概ね55分前後となっています。
中央前橋駅はJR線の前橋駅とは1キロほど離れた街の中心部にあります。途中の赤城駅で東武鉄道桐生線と接続しています。車両基地は大胡駅にあります。
歴史
上毛電鉄の走る前橋や桐生のある群馬県東部は明治時代以降、養蚕、生糸、絹織物といった産業が発展しました。
群馬県東部の主要都市を結ぶ鉄道として両毛鉄道が栃木県の小山と前橋を結ぶ現在の両毛線を開設。
途中、絹織物伊勢崎銘仙の産地伊勢崎を通過するルートを取ったため、赤城山の麓に広がる養蚕の盛んな農村地域は恩恵を受けることができませんでした。
そこで地元の有力者有志が東毛電気軌道と上毛電気鉄道の二つの構想を同時期に計画した。後に二つの計画は一つにまとめられ1926年5月27日上毛電気鉄道株式会社の設立に至った。
1928年11月10日中央前橋から西桐生までの現在の路線が開業しました。1932年には赤城で接続する東武桐生線が開業。太田から中央前橋までの直通運転が開始された。
しかし、昭和10年には直通運転は終了した。赤城を介した東武鉄道との直通運転は戦後も行われたが、需要が伸び悩み利用率の低迷から1963年を最後に廃止されてしまいました。
なお、現在も東武線とは赤城駅構内で繋がっています。
1986年11月1日貨物営業が廃止されます。
もともと生糸や絹織物といった地域の産品を運ぶことも目的のひとつとして営業されてきましたが、鉄道貨物の衰退とトラック輸送の増加、国鉄の貨物営業の整理と取扱駅の減少により廃止となりました。
それ以前、上毛電鉄では貨物は電車内へ積載、電車による牽引で運行されていました。当時の写真を見ると、貨物のサボを掲げ、タキやタムなどを牽引する電車の姿があります。
1988年8月5日には、設備の近代化と保安機能向上のため全線電子閉塞化、ATSの導入を行いました。1999年6月1日ワンマン運転開始、2000年9月18日オールワンマン化を達成しました。
2003年4月1日サイクルトレインを試験導入、2005年4月1日からは平日朝の通勤・通学時間をのぞいて正式サービスを開始しました。
沿線
起点は中央前橋駅ですが、西桐生駅から上り列車に乗って沿線を見ていきましょう。
西桐生駅は開業当時からの駅舎。平成10年には国の登録有形文化財に登録されています。島式ホーム1面2線の地上駅、JR両毛線の桐生駅とは300メートルほど離れています。
東武桐生線の新桐生駅とは渡良瀬川をはさんで3キロほど離れており、とても乗換え駅とはいえません。
西桐生を出発した列車は西へ進みます。線路の両側にたつ住宅の合間をぬけ丸山下駅を過ぎると左へカーブし進路をやや南方向へ振ります。
景色が開けると渡良瀬川です。渡良瀬川に架かる鉄橋は上毛電鉄最長の157.280メートルのガーター橋。国の登録有形文化財に登録されています。渡ったところに富士山下駅。駅前に富士山があります。
登山道を登り頂上には浅間神社が鎮座。桐生市内が一望できるスポットです。渡良瀬橋梁を眺めるには最適の場所でもあります。
天王宿駅を過ぎると盛り土の上を進みます。立体交差でわたらせ渓谷鉄道を乗り越え、左手に東武桐生線が近づいてきたところに桐生球場前駅があります。わたらせ渓谷鉄道の運動公園駅とは右手に広がる桐生市運動公園をはさんだ反対側にあります。
また運動公園には桜の並木があり、桜のシーズにはアマチュア写真家が多く集まります。しばらく東武桐生線と並走、複線のように見える区間ですが単線が並立しているだけです。左手に東武線の留置線が見え、東武からの渡り線が出てきたら赤城駅に到着します。
東武線のホームには浅草からの特急りょうもう号の終点となります。東武との共用駅で上毛電鉄が駅業務を行っています。上毛電鉄が島式1面2線、東武線が頭端式1面2線の2面4線の構成になっており、いまや都市部では貴重な構内踏切で行き来するようになっています。
赤城駅を出発した列車は西へ進みます。住宅、事業所が点在する田園地帯を走ります。東新川、新川、唯一の相対式ホームの新里と過ぎ、車窓にはロードサイドの大きなドラッグストアも見えます。
武井、膳と過ぎ、交換設備と側線がある粕川へ到着します。駅周辺には金毘羅宮があるほかは沼と数件の住宅があるだけです。
夏の昼下がりはセミの鳴き声が聞こえるだけの静かな駅です。粕川駅の中央前橋方には国の登録有形文化財に登録されている長さ42.1メートルの上路鋼板桁橋の粕川橋梁を越えます。
線路はほぼ直線、西へ進みます。新屋を過ぎると右に左にと緩やかにカーブをえがきつつ西へ。道路からいきなりホームの無人駅、北原駅と、住宅の点在する田畑の中を進んでいきます。
駅前に模型屋さんがある樋越駅。大胡駅手前で登録有形文化財に登録されている荒砥川橋梁を渡ります。荒砥川橋梁は全長47.3メートルの上路鋼板桁橋です。大胡駅は島式ホーム1面2線ですが、構内には大胡電車庫が設けられているため沢山の線路があります。
大胡駅の駅舎をはじめ、電車庫、変電所、受電鉄塔、避雷鉄塔が国の登録有形文化財に登録されています。
大胡駅を出発すると、やや住宅や店舗、事業所が増えてきます。江木、交換可能駅の心臓血管センターを過ぎると、上武道路こと国道17号線の下をくぐります。左手に大きな霊園をみながら線路は左へカーブをえがき南西方向へ向きをかえます。
赤坂を過ぎると右へカーブ、進路は再び西へ、桃ノ木川を渡り、駅前に諏訪神社の木立が目を引く上泉。住宅が多く立ち並びだしたら片貝です。
ここからは住宅街の中を走ります。三俣から左カーブで南西方へ進路変え城東へ。ここから左に右にとS字カーブを描き進路は北西へ。左手に広瀬川が近づいてきたら終点中央前橋駅です。
3面3線頭端式ホームを持つ堂々としたターミナル駅で、ホームのすぐ横を広瀬川が流れています。前橋の中心部にあり、自転車ごと乗ることのできるサイクルトレインも利用可能です。
車両
現在、営業運転を行っている車両は、700形とデハ100形の二つの形式です。
700形は元京王帝都の3000系を譲り受けたものです。京王の3000系は、井の頭線で活躍したオールステンレスの車両。学生時代によく乗ったという方も沢山おられるでしょう。
2両編成になっていますが往年の姿を色濃くとどめています。京王の3000系といえばレインボーカラー。上毛電鉄でも健在です。
導入された8編成は全部色違いです。フィヨルドグリーン、ロイヤルブルー、フェニックスレッド、サンライトイエロー、ジュエルピンク、パルテルブルー、ミントグリーン、ゴールデンオレンジの8色。一日で全部コンプリートは難しいでしょう。前面の形状は2種類あります。
一つはオリジナルのままのもの。もう一つは中間車を先頭車化したものです。
改造先頭車もオリジナルと変わらないFRP製のカラーマスクを付けています。外観上の違いは前面部分に普通鋼を使用していることと、通風口の有無程度です。
デハ100形はデハ101の1両のみ在籍しています。16メートル級両運転台。単行で運行が可能で、主にイベント列車や貸し切り列車に充当されています。
電気機関車の代りにバラスト散布のためのホッパを牽くこともあるようです。
デハ100形は1928年11月10日の上毛線開業の日から走り始めた車両です。車齢は90年を超え、現役の電車では国内最古参級の貴重な車両。群馬県近代遺産に登録されています。
昭和、平成、令和と3つの時代を超え、吊掛サウンド響かせて赤城山の麓を駆け抜けます。
デハ100形にはもう1両、デハ104が廃車となったあともカラシ色に再塗装され大胡の車庫に留置されています。イベント時には車庫内で展示されるほか、留置している様子を車窓や大胡駅のホームから見ることができます。
在籍する車両としては、バラスト散布用のホッパ車のホキ1型2両があります。
もう一両、電気機関車のデキ3021が在籍します。東急電鉄長津田工場で入換機として使用されてきた貴重な凸形の電気機関車です。
前橋市のふるさと納税の返礼品で、運転体験ができます。気になる方は一度、調べてみてはいかがでしょうか。
上毛電鉄も地方の鉄道が直面する少子高齢化や沿線の学校の統廃合による旅客の減少に直面しています。事実、旅客数は1965年をピークにずっと減少傾向をたどっています。
自家用車の普及率が高い北関東は中小私鉄にとってさらに厳しい環境です。しかし、鉄道の定時性や安全性は他の交通機関には代えがたいもの。沿線の自治体にとっても大切なインフラです。
上毛電鉄では、自治体の応援を受けて鉄路を守る試みを行っています。
自転車ごと利用できるサイクルトレインや環境定期券、免許証返納者向けのワンデーパスなど、あらたな需要を喚起するためさまざまな利用測施策を実施していますが経営の厳しさは増しています。
桜の季節、真夏の蝉しぐれ、赤城おろし吹き降ろす冬、いずれも魅力があります。東京から日帰りにピッタリ。赤城山の麓をのんびりと走る電車に一度乗ってみませんか。
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