明治末期に地元や関係者の人々の鉄道開通請願運動から誕生し、現在は山形鉄道が運営する「フラワー長井線」。山々に囲まれた穏やかな自然の風景の中を鮮やかな花の色の車体で走る鉄道です。
歴史
山形鉄道は1988年に創立、続いて開業しましたが、長井線の歴史はその70年以上前に遡ります。明治末期の1911年、予算を抑えて建設ができる軽便鉄道の予算が承認されると翌年から長井線鉄道開通請願運動が開始されました。
この運動が実を結び、1913年に赤湯~梨郷間が開業、1年後には梨郷~長井間の延伸開業に漕ぎつけました。当初「長井軽便線」という名称でしたが1922年に「長井線」と改称され、翌年の4月、鮎貝~荒砥間が通ったことで長井線全線が開通しました。
1954年に旅客列車が気動車になり、その後西宮や南長井駅が加わるなどの進展をしながら地域住民の生活に根ざした運行をしてきた長井線でしたが、経営面との折り合いが厳しく1986年10月、整理対象の鉄道となることが決まりました。そこでこのひと月余り後
にから立て続けに長井線特定地方交通線対策協議会が開催されたのです。
こうして1988年3月、第3回目の協議会開催と共に第三セクター山形鉄道株式会社設立発起人会議が、そして4月に創立総会が開催され同年10月には営業開始となりました。
その後の利用者数アップには苦戦をしつつもフラワー長井線はそのたゆまぬ努力がいくつかの形で報われることになります。その1つ目が2006年の日本鉄道賞において特別賞を受賞したことです。
この賞は「鉄道の日」の創設をきっかけに、鉄道について多角的に優れた取り組みをした団体に授与されるものです。
「マイレール」である山形鉄道と共に地元の高校生が手作り駅舎を建設、地元企業等が支援をしたり、利便性の向上への努力等が選定理由となりました。
2つ目は、フラワー長井線開業20周年を迎えた2008年、最上川橋梁が土木学会の選奨土木遺産に認定、さらに翌年は経済産業省の近代化産業遺産に認定されたことです。
その5年後の2013年には長井線誕生100周年を迎え特別列車も運行されました。そして2015年、3つ目の栄誉として羽前成田駅の建屋が文化庁登録の有形文化財に認定されたことが挙げられます。
地方の小さな路線として採算面では悩みながらも地域の人々のかけがえのない足として様々な取り組みを続けつつ可能性を探し続ける山形鉄道です。
路線
山形鉄道は赤湯~荒砥間を走り営業距離は30.5km、17の駅を1時間前後かけて6両の電車が走っています。赤湯駅でJR奥羽本線とJR山形新幹線に、今泉駅でJR米坂線に乗り換えができます。
沿線
豊かな自然の風景に溶け込む各駅舎自体が既に訪れる人々の興味を引くものが多いです。例えば赤湯駅のJRの東口はパラグライダー、フラワー長井線の西口はログハウス風のデザインとなり、それぞれ違った雰囲気が楽しめます。
そして南陽市内には4つのワイナリーがあり、クオリティーの高いワインを造っています。これらのワイナリーに赤湯駅からアクセスできます。
1989年、平成元年にできた白兎(しろうさぎ)駅は可愛らしい名前ですが、地名からきています。14世紀末に砂金の薬師如来を見つけたのが白狐と白兎の導きだったという言い伝えから白兎が神の使いとして大事にされ、地名となりました。
葉山神社には140年生きた白兎のしだれ桜に代わり、若いしだれ桜が大杉と一緒に訪問者を迎えます。
花の名所は他にも蚕桑駅の釜の越サクラ、あやめ公園駅、長井駅と南長井駅の間の白つつじ公園、南長井駅からの東にある伊佐沢の久保桜、宮内駅には双松バラ園等々、沿線にまんべんなく広がっています。
そして荒砥駅と四季の郷駅の中間を流れる最上川に架かっているのが最上川橋梁です。ダブルワーレントラスという錬鉄製のこの橋はイギリスから輸入されるとまず旧東海道本線の木曽川に架けられていました。
これが1887年(明治20年)のことです。その後強度等の関係で役割を終えることとなり、国鉄長井線時代にJR佐沢線とに移設されました。そして長井線では径間短縮等の改造後1923年、最上川橋梁として竣工となりました。100年を超えても鉄道が走り続ける頑強で且つすらりと長く横たわる直線の美しさを楽しめる橋が見られます。
車両
山形鉄道を走るのは、YR-880形で、新潟鐵工所で製造されました。全長18m、6両が活躍を続けています。前面の窓は平面、ワンマン運転仕様の機器で、寒冷地であることを考慮し側扉は気密性や雪、凍結対策に有効な引き戸式です。
フラワー長井線の名に相応しく、山形鉄道の車両はとても花やかです。
まずシンボル車両の「花結びよりラッピング」は沿線にある2市2町の繋がりを表現するデザインになっています。白のベースに花びらが散りばめれてたラッピングは心がほっこりとなる雰囲気を醸し出しています。
内部はサクランボ色のロングシートに着脱可能な44名分のテーブルが設置されており、食堂車として活用できます。これに木目調の化粧板、レトロ調な照明と心地よさを演出しています。
そして2016年夏から順次運転を始めたのが4種類のラッピング車輛です。沿線の市町に自生する花を表現したデザインになっています。
まず長井市には市の花となっているあやめ公園があり、水をイメージした青地に鮮やかなあやめの花が散りばめられています。
南陽市には桜の名所、烏帽子山公園があります。そこでピンクをベースに烏帽子山千本桜が満開に咲き誇ったデザインとなっています。
白鷹町は日本一の紅花の生産量を誇る町です。そこでラッピングは紅色にオレンジと濃い黄色の紅花、そこに緑の花茎というコントラストが良く映える彩になっています。
そして川西町の町花はダリアで、日本最大級のダリヤ園があります。従って色とりどりの大ぶりのダリアが黄色のベースに鮮やかに浮かんでいます。
その日、その時間にやってくる列車のデザインが楽しみになるフラワー長井線です。
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