京都の人には「嵐電」と呼ばれ親しまれている京福電鉄。
いまでは四条大宮から嵐山を結ぶ嵐山本線と、帷子ノ辻から北野白梅町を結ぶ北野線の京都市内の二つの路線のしかありませんが、かつては多数の路線を有していました。
京福電鉄は先の二つの鉄道路線以外にも路線を有しています。
京都の北東、八瀬から比叡山に登る叡山ケーブルと、その先、比叡山頂上に至る叡山ロープウェイの二つの路線です。
ここで不思議なことに気付かれるかと思います。八瀬といえば叡電こと叡山電鉄の沿線。
なぜ飛び地のように叡山ケーブルと叡山ロープウェイを京福電鉄が経営しているのか、それは京福電鉄の歴史に秘密があります。
嵐電こと嵐山本線は、嵐山電車軌道によって1910年3月25日に開通しました。
その後、1925年4月2日に京都で発電や給配電事業を行っていた電力会社、京都電燈と合併しました。
京都電燈は、1914年鉄道事業に参入。福井県で鉄道事業を行っていました。現在のえちぜん鉄道勝山永平寺線にあたります。
1925年11月3日には北野線、北野・宇多野間、1926年宇多野・帷子ノ辻間が開通、現在の嵐電の路線がほぼ完成しました。
北野駅は北野白梅町駅ではなく、北野天満宮の南側、ちょうど京都佛立ミュージアムあたりにあった駅でした。注意して地図を見ると、今出川通りが北へ少しカーブするあたりに直進する小道がかつての鉄路の存在を想像させます。
京都電燈は嵐電や福井で以外にも鉄道事業に注力しました。1925年に現在の叡山電鉄叡山本線を、同年暮れには叡山鋼索線を開通させました。
1942年3月2日、太平洋戦争にともなう電力統制により発電や配送電事業と鉄道事業を分離。
鉄道事業の受け皿として京福電鉄が設立されました。同年8月には現在の叡山電鉄鞍馬線の前身鞍馬電気鉄道、現在のえちぜん鉄道三国芦原線の前身三国芦原電鉄と合併しました。
当時の京福電鉄は、福井県と京都府で複数の路線を運営していました。
さらに戦後の1956年比叡山ロープ―ウェイが営業開始します。
しかしその後、鉄道事業の不振から嵐電を残し相次いで分離譲渡していきます。
1986年に叡山電鉄へ叡山本線と鞍馬線を分離譲渡、このとき叡山ケーブルと叡山ロープウェイは京福電鉄に残されました。だから今でも京福電鉄を経営しています。
福井県の京福電鉄越前本線で重大な事故を相次いで2回発生させたため、2001年6月25日国土交通大臣より福井地区の鉄道運行停止命令が発せられ、2003年2月1日えちぜん鉄道へ福井地区の鉄道事業を分離譲渡。
以後、京福電鉄の鉄道事業は嵐山本線と北野線になりました。
京福とは京都と福井を結ぶ?
ちなみに京福電鉄の社名ですが、京都と福井を結ぶという大きな目標を掲げたわけではなく、京都と福井で鉄道事業を行うという意味と、京都電燈が敷設した送電線の京福送電線からとったといわれています。
現在の嵐電は路面電車のような車両で運行されています。
北野線と嵐山本線の車両は共通です。
運行形態は、北野線北野・帷子ノ辻間で線内折り返しですが、多客期や観光シーズンには嵐山まで延長運転されています。
嵐山本線は四条大宮から嵐山まで全線通して運転されています。列車はすべて各駅停車で、急行などの列車は設定されていません。
嵐電の車両のカラーリングは基本的に上半分が薄茶色、下半分が緑色のツートンカラー。
2010年に開業百周年を記念して塗色の変更を行い、京紫に変更されました。
京紫への変更は保守の手間削減の塗装簡略化の側面もありました。
塗装変更は順次進められていますが、まだまだ全車両の変更は終わっていませんが、薄茶と緑のツートンカラーの車両を撮影されたい方は早めに機会をもったほうがよいかもしれません。
さて車両の方ですがフラッグシップ的存在にあたるのが2001年に登場したモボ2001型でしょう。
現在、2両在籍しています。2両とも京紫を纏っていましたが、2001号車は「京漬物もり」号として専用ラッピングされ運行されています。
車両の特徴は、嵐電初のVVVFインバータ制御、カルダン駆動車である点でしょう。
シングルアームパンダグラフも本車が初導入です。ちなみに、嵐電では1975年までホイール式ポールを採用していました。
ただ、唯一のカルダン駆動車のため他の形式とは連結できないため、単行又は、2001型どうしで連結され運用されています。
他の車両とことなる軽快な車内音にも注目していただきたい車両です。
嵐電の車両は2001型以外にもモボ101型、嵐電最古参モボ301型、嵐電初の冷房車で全面デザインが大きく変わったモボ501型、現在の主力車両でモボ2001型へ繋がる新嵐電スタイルを採用したモボ611型、621型、631型が在籍しています。
どの車両も嵐電らしい魅力があふれる車両です。また、ラッピング車両も多いので、車両によって大きく雰囲気がことなるのも面白いところです。
沿線には京都の下町の風情があり、桜のトンネルなどの撮影スポットも豊富です。京都へおこしの際は嵐電の魅力にぜひとも触れて下さい。
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